ITOKI

ITOKI Open-DX Lab

for your inspiration.

OAメーカーからデジタルサービスの会社へ
変革を遂げるリコー

overview

リコーグループは今、OAメーカーからデジタルサービスの会社へと変革を遂げようとしている。約200の国と地域で事業を展開し、約8万人の従業員を擁する同グループの変革は、時代のニーズに応えたものだ。デジタルサービスの根幹には、顧客の「はたらく」に寄り添い続けてきた確かな技術がある。

言語と画像、二つの強みを最大限に生かすリーディングカンパニーへ

「機械ができることは機械に任せ、人はより創造的な仕事をする」――。リコーが1977年に提唱したオフィスオートメーション(OA)の思想は、それから30余年後の今日、各界のイノベーションをもたらしている「DX」に通じるものだ。2020年、同グループは一つの宣言をする。

「ペーパーレスが進んで印刷の需要が減少していく社会にあって、リコーがどのような事業活動により社会の課題を解決していけるのか。それを模索した結果、私たちは『デジタルサービスの会社への変革』を宣言しました。OAのコンセプトを、新しい生活様式で実現することを目指したのです」と、リコージャパン㈱エンタープライズ事業本部の押元努氏は言う。

リコージャパン株式会社 エンタープライズ事業本部 アライアンス・パートナー営業本部 
ソリューション推進部 プロデュースグループ 
アシスタントマネージャー:押元 努氏

クラウドビジネスが興隆し、ここ数年はチャットGPTや生成AIに代表されるように情報処理の方法が加速度的に進化している。目まぐるしく変わっていく技術の領域で、リコーには圧倒的な強みが二つあった。

一つは自然言語処理技術。長年、複合機の開発・製造をメイン事業とする同社では、「ドキュメント」をオフィス業界における情報の表現・伝達・保存の単位と位置づけ、重視してきた。近年のオフィスでは、ドキュメントの内容を理解した上で業務の効率化や自動化を支援する自然言語処理技術へのニーズが非常に高い。これを受け、リコーはこれまでに蓄積したAIの開発技術をもとに、2024年8月に企業ごとのカスタマイズを容易に行える700億パラメータの新しい大規模言語モデル(LLM)を独自開発した。同LLMは、自然言語の学習に利用するコーパスの選定や、誤記や重複の修正などのデータクレンジング、学習するデータの順序や割合を最適化するカリキュラム学習などリコー独自の方法を採用し、日本語による安定した回答を実現。また、製造業で特に重視される日本語・英語・中国語に対応したほか、お客様のニーズに合わせてオンプレミス・クラウドのどちらの環境でも導入が可能だ。

「AIを現場の業務に本当に適用するには、その企業に特有の用語や言い回しまで含めたテキストデータをLLMに学習させ、カスタマイズする必要があります。リコーはこの学習のプロセスにも独自の工夫を組み込み、優れた性能を実現しました」(押元氏)

LLMはパラメータ数が多いほど、より多くの情報を処理できる。その一方で、学習や運用の難易度が上がることは否めない。リコーはその点にも配慮し、従来と比較して大幅なコスト低減と開発期間の短縮を実現した。このため、クライアントごとのLLMカスタマイズにおいて、安価・短納期で提供することが可能になっている。

画像解析技術で人手不足という社会課題にアプローチ

もう一つの強みが、画像処理技術だ。
これは世界中の顧客に複合機を提供しているリコーを体現する技術と言えるだろう。

「高度な画像処理は、工場や屋外などの現場で、工作機械の異常を検知したり、道路の状態を可視化したりする技術として実装されています」(押元氏)

重要な社会インフラである道路には維持管理が欠かせず、適切な時期の修繕が必須となる。リコーは、専用車両を使わずに路面の状態を計測できる撮影システムを開発し、路面・トンネル・斜面・のり面(人工的に形成された土や岩の斜面)の点検を自動化する提案を行っている。また、建築・製造の業界では仮想世界の中に実世界を再現する「デジタルツイン」の活用が加速しているが、360度カメラによる画像を拡大しても高画質を維持できるリコーの技術は、現場のDXを推進する原動力となるものだ。遠隔操作で空間やモノの状態を正確に把握できるテクノロジーは、人手不足という日本のあらゆる業界が抱える課題にもアプローチする。

最先端のデジタルサービスを提供するために、リコーでは人材育成も強化した。専門的な能力に特化した研修のほか、全社員を対象にしたデジタルリテラシー教育を実施している。こうしたデジタル人材が、リコーのカルチャーである高品質へのコミットメントに貢献し、対話の中からクライアントの真の課題を見つけて適切なデジタルサービスを提案する役割を担うのだ。ただし、リコーグループだけであらゆる社会課題に対応できるかといえば、そうではない。

「一社の力には限界があります。複雑化する社会課題にスピード感を持って対応するには『共創』が欠かせず、多様な領域に強みを持つ企業が各々の強みを持ち寄るオープンイノベーションが重要です」(押元氏)

RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO(RICOH BIL TOKYO)

リコーが品川に構えた「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO(RICOH BIL TOKYO)」は、リコーグループの最先端技術を体感する場であると同時に、共創を通じてパートナーになり、コミュニティーを形成していく拠点ともなる。ITOKIもまた、パートナーの一社だ。後編ではRICOH BIL TOKYOという施設や、そこから生まれて実装されつつある技術について紹介する。

TOP