海外の働き方を紹介するシリーズ企画「WorkStyle Wonders」第3回目。
シリコンバレーの中心、メンロパーク市でアクセラレーター、コワーキング・スペースを提供するBootUp社。同社のビジネス開発部副社長として、様々なベンチャーの働き方を見てきたLaleh Masnaviさんにシリコンバレーのベンチャーがどういう働き方をしているか、また競争の厳しい職場環境でどのようにプライベートの生活を両立しているのか、お話しいただきました。
最初にBootUpについて、教えて下さい。
BootUpはシリコンバレーの中心に位置しており、アントレプレナーシップ、イノベーションを生み出すコミュニティを創ることを目的としています。ベンチャーと投資家、起業家、アドバイザーをつなぐ機能もあります。日本では、株式会社フジクラのイノベーション拠点ブリッジ(http://www.bridge.fujikura.jp)と提携しています。BootUpのチームは起業家のマインドセットを育成し、ベンチャーが戦略を明確化し、実行できるように支援します。
私達はメンロパークというシリコンバレーの中心に位置していることで、数多くの有望なベンチャーにオフィス・スペースを提供する幸運に恵まれました。当社はダイナミックでクリエイティブな環境を提供するよう努めております。例えば、BootUpには開放的なバックヤードが用意されており、カリフォルニアの青空の下、アウト・オブ・ザ・ボックス、すなわち、型にとらわれない思考ができるようになっています。
BootUpのバックヤード
入り口から入ると右側に開放的なカフェがあり、エスプレッソを飲みながら、チームで集まってディスカッションができるようになっています。カフェの壁にはスティーブ・ジョブズのタートルネック、マーク・ザッカーバーグのスウェット等が飾ってあります。シリコンバレーでのベンチャーをモデルにした米国の人気TV番組「シリコンバレー」の出演者のサインもあり、和やかな雰囲気になるような空間を演出しています。
BootUpのカフェ
スタートアップで働く人々はどういうことを考えて起業に踏み切るのでしょうか。
私達は多くのスタートアップの成功を目にしてきました。シリコンバレーはイノベーションで知られています。多くの人々はルーチンを好み、逆に変化を好みません。しかし、シリコンバレーでは革新的な事業アイデアを創造する「勇気」を育んできました。現状を変えることにモチベーションを持っています。変化を起こすために、「計算された」リスクを取ることをいといません。起業家は問題を見つけ、直したいと思ったら、他人の都合には従いません。世の中に変化を起こすために莫大な時間をつぎ込みます。また、シリコンバレーには失敗話はつきませんが、起業家は「失敗」とは思っていません。間違いを犯すことを恐れず、間違いから学びます。
シリコンバレーのベンチャーの働き方とは、どのような感じでしょうか。
シリコンバレーのベンチャーは、いかに生産性を高めるかを常に考えています。同時に、プライベートな時間も大切にしており、生活の質を高めるよう努力しています。ソーシャル・インフルエンサーの中には週5日ではなく週4日労働に取り組もうとしている人達もいます。彼らは訓練された人でも集中して働けるのは1日4時間までということを理解し、さらに一週間の労働日数を1日減らすことで、業務での決定スピードをより速めています。また、一日オフの日が増えることで、仕事にポジティブに取り組むことができます。ただ、顧客の要求に応えるために、24時間働き続けることもあります。
より生産性を向上させるために、職場で集中力をより高め、効率的に食事の時間を取るようになります。従業員は仕事の妨げになることをなくし、顧客に影響を与えない不必要な打合せを避ける等、クリエイティブな働き方を探しています。例えば、最近上場したSlack等のテキストメッセージ・ベースのコラボレーション・ツールを活用することで、チーム・メンバーの集中を邪魔することもなくなります。
スタートアップの組織や意思決定はどのように行われるのでしょうか。
多くがフラットな組織となっており、従業員の声が無視されるような階層的な構造にはなっていません。意思決定の承認プロセスは早いです。最も重要な目的を達成するために、ものごとが早いスピードで動きます。
シリコンバレーには中国、インド、ヨーロッパ等、様々な国々から人が集まってきていると思いますが、多様性については如何でしょうか。
ステレオタイプ、偏見はシリコンバレーの信念と異なります。マイノリティの人達がリーダーシップを発揮できるよう様々なサポートも提供されています。
多様性のサポートに関しては、例えばBootUpでも、女性起業家 向けの教育プログラムのBootUP Women、アフリカの起業家向けの BootUP Africaがあります。最近、シリコンバレー・フォーラムという団体による女性起業家向けピッチイベント( Silicon Valley Forum's Women in Tech Festival )が開催され、私も参加してきました。IBM等がスポンサーになり、会場にブースを設け、多様性の取り組みについて説明するようになっています。また、多様性を重んじる企業のリーダーのランキングもあり( recognized as the leaders of the companies that care about diversity and inclusion )、多様性に対応するための健全な競争環境があります。
シリコンバレーでは人材確保が大変と聞いていますが、採用はどのように行われるのでしょうか。
シリコンバレーのスタートアップ採用は、知人からの紹介が大部分を占めます。そのため、どの職場においても、上司やチームメートとの信頼関係構築が大切になります。
起業家は何をモチベーションに働いているのでしょうか。会社をIPOさせて億万長者になることでしょうか。
お金のために起業する人は少ないと思います。スティーブ・ジョブズが「put a ding in the universe(世の中に何かを残す)」と言ったように、成功する起業家は自分のアイデアを形にすることに喜びを感じています。
日本の読者に何かお願いします。
日本のスタートアップの方々、シリコンバレー、Bootupでお待ちしております。