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モチベーションの相互理解が、学校や職場を一変させる -EQIQ株式会社伊藤弘泰氏に聞くモチベーション管理システム『Attuned』とは?(前編)

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モチベーションは人の「やる気」に火をつける。それは努力や専心の原動力であり、困難に挑戦する力の源でもある。こうした人間の内在的なモチベーションを測定・分析し、可視化することで、企業人事に役立つサービスを提供する――。心理学とデータサイエンスをもとに、EQIQが開発したモチベーション管理システム『Attuned(アチューンド)』の可能性について、EQIQ株式会社取締役の伊藤 弘泰氏に伺った。

設問への回答をもとに、内発的動機をグラフで見える化

―伊藤さんはDXの世界で長いご経験をお持ちですが、現職につかれた経緯をお聞かせください。

伊藤弘泰(以下、伊藤) 私はいわゆるITやDX畑で20年以上仕事をしてきました。そのなかで気づいたのは、 DXでもっとも重要なのは、人間のモチベーションやコミュニケーションだということです。実際、これが原因でDXがうまくいかないという例は多く、DXに取り組む企業のおよそ70パーセントが失敗に終わっています。この問題にどう立ち向かうのか考えていたとき、EQIQ社が人間の 内発的動機(モチベーション)を可視化するAIツールを開発したのです。「これだ!」と思い、入社したのが 2024年2月でした。

―そのAIツールというのが、『Attuned』ですね。

伊藤 そうです。EQIQはかつては人材派遣会社だったので、会社側が個々の従業員を把握するのは容易ではない、ということを熟知していました。働く人は、それぞれどんな価値観を持って生活し、仕事をしているのか。従業員を奮い立たせる内発的動機は何なのか。それを客観的に分析し、結果を目に見える形で提示することはできないものか。そこで、フランクフルト大学の心理学チームとの共同研究で開発したのが『Attuned』です。

―具体的にはどのようなものでしょうか。

伊藤 『Attuned』はインターネットさえあればいつでもどこでも利用できるサービスで、すでに300社を超える企業に使っていただいております。はじめにモチベーション・アセスメントがあり、ネット上で設問に答えてもらって、その人のモチベーションを調べます。価値観に影響するモチベーションの要素が11カテゴリーに分かれており、設問への回答をもとに数値化してグラフで提示します。11のカテゴリーは、「利他性」「自律性」「競争性」「フィードバック」「ファイナンス」「想像性」「成長」「合理性」「安全性」「社交性」「ステータス」。自分はこのうち、どんな要素をモチベーションにして頑張るタイプか、アセスメントを受けることでわかるわけです。

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円滑なコミュニケーションは、モチベーション傾向の理解から

―各カテゴリーとモチベーションはどんな関係にあるのですか。

伊藤 たとえば「ステータス」の数値が高い人は、周りから認められ、尊敬されることに喜びを感じて頑張るタイプで、昇進や社会的な地位を志向する傾向があります。「自律性」が高い人は束縛を嫌い、自分で意思決定や問題解決をすることにやりがいを感じるタイプで、高い責任感を持っていると考えられます。

―各人のモチベーションを理解することは、人事や職場内のコミュニケーションにどう役立つのでしょうか。

伊藤 人事面では、従業員の個性や適性を参考にした人事配置や、研修などへの対応がしやすくなります。コミュニケーションの改善について言うと、例えば仕事が終わった後に、上司が部下を飲みに誘うケースがありますね。その上司は、「社交性」が高い人かもしれません。誘われた部下も「社交性」が高ければ、楽しい時間を過ごしてリフレッシュすることができるでしょう。しかし、「社交性」が低い部下や、「合理性」や「自律性」が高く、自分の時間を大切にしたいと思う部下にとっては、上司と飲みに行くのが負担に感じるかもしれない。その場合、上司はほかのコミュニケーションの方法を考える必要があるわけです。

もう一つ例を挙げてみましょう。会社が従業員に何かの資格取得を推奨する場合、「成長」のモチベーションが高い従業員には、「資格取得は成長の糧になりますよ」と話すと受け入れられやすくなります。同様に、「利他性」が高い人には「資格を取ってチームに貢献しましょう」、「競争性」が高い人には「同期に差がつきます」、「ファイナンス」が高い人には「昇給につながりますよ」というように、それぞれのモチベーションに合わせて提案の仕方を変えると、受け入れられやすくなります。人を動かすにはアメとムチが必要と言われますが、一人ひとりのモチベーションの傾向を理解して、その人に合ったアプローチをとることで、ムチなどなしにやる気を高めることは可能なのです。

―『Attuned』のエンゲージメント・サーベイ(従業員の会社や仕事に対する関心度、貢献度を測定する調査)では、どのようなことをするのですか? 

伊藤 エンゲージメント・サーベイでは、内発的動機が充足されているかどうかを測定します。内発的動機が充足されていると、エンゲージメントも高くなります。ある会社で、営業部の6人がサーベイを受けたところ、チームとしてのエンゲージメントが低迷していることがわかりました。モチベーションを調べてみると、6人中5人は「ファイナンス」(お金を稼ぐ)や、「ステータス」(地位・出世)の数値が高い人たちでしたが、Aさんだけは、「フィードバック」が高かったのです。

「フィードバック」が高い人は、自分のパフォーマンスに対するフィードバックが少ないと不安を感じ、モチベーションが低下してしまいます。このケースでは、上司が積極的にフィードバックを行うようにしたところ、Aさんの内発的動機は充足され、チーム全体のエンゲージメントも向上しました。

組織のモチベーション(ファイナンスが高い例)

後編では事例を交え、企業における『Attuned』の活用と今後についてお話を伺います。

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