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ジャスミーに聞く、ブロックチェーン技術を生かして実現する「データの民主化」とは

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「データの民主化」を掲げて、ブロックチェーン技術を生かし、誰もが簡単に安心してデータを扱うことができるプラットフォームを開発・提供するジャスミー株式会社。この技術は、私たちの暮らしや働き方をこれからどのように変えるのだろうか。同社代表取締役社長の佐藤一雅氏と、取締役 兼 ソフトウェア開発統括の萩原崇氏に同社の成り立ちから現在、そして未来への展望について尋ね、前・後編に分けて紹介する。

分散型のデータ活用で、「データの民主化」を実現する 

――ジャスミーは2016年に設立されました。起業のきっかけをお聞かせください。 

佐藤一雅(以下、佐藤) 私はもともとソニーに在籍し、ソニースタイルドットコム・ジャパンの代表取締役社長を務めたほか、「So-net」や「VAIO」などの事業に携わりました。私は根っからのインターネット小僧で「インターネットが世の中を幸せにする」と信じてきましたが、誹謗中傷や“なりすまし”が横行している状況に対し、次第に危機感を強めたことが起業のきっかけです。「もっと安全で、誰もが信頼して使えるインターネットの世界を作るべきだ」と考え、ソニー元代表取締役社長の安藤国威とともに設立しました。 

――「誰もが信頼して使えるインターネット」とは具体的にはどのようなものでしょうか。 

佐藤 2016年に経産省は企業のDX推進を提唱し、データ活用についてアメリカ西海岸の有力企業と日本企業を比較しましたが、日本企業の持つデータ量は圧倒的に小さい。それを踏まえて私たちは「今からデータを集めてGAFAに立ち向かうのは難しい」と思ったのと同時に、「特定の企業が管理者となってビッグデータを握り、その下にユーザーがいる」という中央集権型はこの先ずっと続かない、分散型の時代が来るはずだと予見しました。 

ソニーの人間は、人がやらない、やれないと思うことを「やる」というところがあるので(笑)、私たちはユーザーが自分で管理したデータを自由で簡単に、しかも安全に活用できる世界を作れないかと考えたのです。大企業がビッグデータを管理しない、それがすなわち我々の掲げる「データの民主化」です。 

本人を認証する独自の技術で、積極的なデータ活用を促す 

――「データの民主化」はどのようなサービスによって可能になるのでしょうか。  

佐藤 まず考えたのは「パーソナルデータロッカー(Personal Data Locker)」で、ユーザーが自分自身でデータに鍵をかけて管理するものです。たとえば、パソコンメーカーのコールセンターに「パソコンが故障してネットにつながらない」と電話をかけて、でも壊れたのはパソコンではなく、ルーターに問題があることが判明したとしましょう。しかし、通話内容は個人情報に当たるため、メーカーからルーターのコールセンターにそのまま送ることはできません。しかし、ユーザーが自分のロッカーに通話データを入れて、別の企業に渡せば、再度説明する手間が省けますし、企業側も個人情報を管理するコストが減らせます。 

――「パーソナルデータロッカー」にはどのような技術が使われていますか。 

萩原 崇 当社のプラットフォームやサービスの運用は、独自の技術である「Know Your Customer(KYC)」と「Know Your Machine(KYM)」の2つが前提となっています。KYCは、私たちのシステムを使っているユーザーが誰かを正しく判断する技術。KYMはユーザーがどのパソコン機器からアクセスしているかを正しく認識する技術で、この2つによってなりすましを防ぐことができます。ユーザーが、自身でデータをロッカーに入れて、必要なときに取り出して、アプリケーションや企業に提供して使う。もちろん、これらのデータはすべてブロックチェーンで改ざんできないように守られています。 

佐藤 今は利便性向上のために、あらゆる場面においてデータ活用が進められていますが、個人情報をクラウドに上げるのは怖いと感じるユーザーは少なくない。活用どころか、なるべくデータを守って使わない方向に行ってしまっているので、その問題を解決するのがこの技術なのです。 

――― 

前編では「データの民主化」の意義とそれを支える技術について触れた。後編ではそれが私たちの暮らしをどのように変えるのか、より具体的なサービスについて紹介する。 

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