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DX人材の育成を成功に導くポイントとは?研修のプロフェッショナルに聞く

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予測ができない時代、旧態依然としたビジネスの将来を危惧する企業にとって、DXは目下の急務だ。株式会社キカガクは、「教育」を軸に人材領域における企業のDXを支援し、クライアントから厚い信頼を得ている。独自路線を貫くその研修が支持される理由は何か。企業の人材育成を、同社の研修事業部 兼 セールス&マーケティング事業部 
統括部長である秋山氏が、プロフェッショナルの視点からひもとく。

研修の先にある人材計画まで見据えてプログラムを策定するのがキカガクの理念です 

――株式会社キカガクが提供する研修プログラムの特長をお聞かせください。 

私たちの研修プログラムには三つの特長があります。一つ目は、「講義力」と「講師力」。質の高い講義力は我々が提供する研修サービスの根幹であり、それを支えるのは講師の力にほかなりません。そのため、講師の採用基準を厳しく設定しています。選考を経て試用期間へ進めるのは、応募数全体の1%程度。2カ月の試用期間内に徹底した講師育成プログラムを受講してもらい、一定のレベルに達することができなかった場合、本採用は見送りとなります。選考では、教育に対する熱い思いも重視します。そのため、当社の講師陣はそれぞれバラエティーに富んだキャリアを持つ、個性的な人がそろっています。新卒の場合は、ほとんどがデータサイエンス専攻の修士以上が対象となります。 

二つ目は、研修サービスのラインアップです。私たちの最終的なゴールは組織の変革であり、集合学習やeラーニングの先に、大局的な人材計画を見据えています。研修を経た人材にどう活躍してもらいたいのか、企業が目指す未来像から逆算してプログラムを組み立てているのです。さらに、研修が修了した後も顧客企業が理想の変革を実現するまで伴走します。 

三つ目は、労働集約型研修への注力です。学習成果の効果を最大限に引き出すため、顧客に合わせて細かくカスタマイズを行います。事前のヒアリングや事後のフォローアップなどに時間をかけ、人でしかできない領域に価値を置くのが当社の在り方です。これら三つの特長が、顧客からの高い評価につながっていると考えます。 

――キカガクさんをはじめ、研修を提供する企業は多く存在します。クライアント側から見て、研修提供企業を選択するポイントは何だと思われますか。 

企業によりKPI(重要業績評価指標)は異なると思いますが、まずは研修前に「どういう人材を何人育成したいのか」という、定量的なゴールを決めることが重要になります。その上で、目的と具体的なゴールに対し、とことんすり合わせをしてくれる研修提供企業を選ぶとよいでしょう。とくに研修前後のサポートが充実しているかどうかは見極めのポイントになります。研修前のヒアリング次第で受講生の解像度レベルは大きく違ってきますし、本来はそこに合わせてプログラムの内容や講義方法は調整されるべきものです。どの顧客に対しても一律同じ内容で、研修が終われば「さようなら」という業者では、期待する効果を得るのは難しいと思います。人材育成におけるKPIは測りづらいものですが、メンバーが研修後にどんなプロジェクトに参画できたのかは、一つの指標になります。そこまで根気よく追いかけ、サポートと調査を継続してくれる会社は信用できると思います。 

――イトーキもキカガクさんの研修を受けています。 

イトーキさんは自社の人材プランを策定済みであり、そのプランに沿ってITスキルを段階的に上げていきたいという目的も明確でした。研修のキーワードは「自分ごと化」であると判断し、1セッション20〜30人で1日をかけて研修を行いましたが、良いものをご提供できたという手応えがあります。それは何と言ってもイトーキさんのビジョンをもとに、事前に細かいすり合わせができたことが大きかったと思います。ヒアリングが万全だと、企業の文化に合わせたワードチョイスまで調整できるので、アウトプットの質が変わってきます。ターゲットに刺さる内容になり、効果が高まるのです。 

研修の成否を分ける最初のポイントに、「受講生が自分の業務にどのくらい課題感を持っているか」ということと、「上長の理解」があります。イトーキさんの場合は挙手制で希望者を募っていたので、そもそも意識の高い方が集まっていました。そして、研修のため丸1日業務を外れることに対する上長の皆さんの理解もあり、たいへん進めやすかったです。キカガクの強みをうまく生かしていただいたと感じています。 

DXで組織の成長を図るために、変革マインドを持つ人材を増やすのが研修の意義です 

――DXはここ数年のバズワードになっていますが、これが企業にとって優先事項である理由は何でしょうか  

DXの本質は、最新技術やトレンドを掛け合わせて組織の成長を図ることにあります。前提として、どう成長したいのかという課題意識が必要で、そうした変革のためのマインドを持つ人材を組織内に増やすことがDX研修の目的となります。DXの施策を打っている企業とそうでない企業では、中長期的に見ると成長に大きな差がつくと思われます。 

「DX」や「DX人材」は、5年ほど前から注目度が急上昇したワードです。その理由は、デジタル技術の著しい変化にあります。例えば2022年に生成AIがいきなり登場し、それまでの常識を覆しました。「当たり前」がガラッと変わり、1年先には何が起こるのか予測もつかない状況にあります。変化のスパンが短くなる中で、最新技術をキャッチアップし、掛け合わせていける人材をどれだけ擁しているかが企業の成長を左右するといえるでしょう。当社のクライアントは現状に危機感を持ち、AI教育に熱心なところが多いです。しかし日本全体を俯瞰すれば、Tier2*以下の中小企業を中心にいまだ手つかずのところが多く、諸外国に比べて遅れている感は否めません。それは逆に言うと、まだまだ伸びしろがあるということです。 

*自動車業界、建設業界などにおけるビジネスプロセスのポジション(階層)。完成車メーカーに直接部品を供給するメーカーがTier1、Tier1に部品を供給する企業がTier2と、多層的に続いていく。

――従来の人材育成研修とDX研修には、どのような違いがあるのでしょうか。 

そうですね。最新技術は導入時点で「複雑」と思われがちなので、ハードルが高いのが難点です。そこで研修では、まずは触ってみる、やってみるという体験を通して、そのハードルを下げる必要があります。実際にやってみれば思ったほど難しいことはなく、そこで「こんなに簡単なことだったのか。それなら競合他社はとっくに先を行っているのでは?」と危機感を持つ受講者が多いようです。 

危機感を持ちつつ、最終段階では「面白い」と感じていただくことで、学びのモチベーションは向上していきます。ですからキカガクのプログラムは座学であっても、7割はワークショップに費やしています。手を動かしてみることがDX研修のポイントといえるでしょう。 

――研修で効果を上げている企業の共通項は何でしょうか。 

二つのパターンがあります。まず、意欲的な経営者がトップダウンでDXを牽引している場合。人材定義がはっきりしていても、研修の効果を出すためには「ふりかえり」と微調整の繰り返しが不可欠ですが、トップダウンだとPDCAのスピードが非常に速く、成功につながりやすいのです。DX認定企業の多くはこのパターンですね。しかしこれは全体からすると圧倒的に少なく、大多数は二つ目のパターンであるボトムアップです。いきなり全社的な施策を打つのではなく、部署単位で小さく始めるパターンです。 

ボトムアップの場合、たいていは該当部署に課題があり、その解決から逆算して研修内容を組むことになります。いわゆるPBL(Project Based Learning)研修で、成果は課題へのチャレンジで測ることになります。このパターンで成功している企業に共通するのは、知見の社内共有化が徹底されていることです。事例を横断的に共有し、全社に向けて発信することで、結果的にDX推進のマインドを企業文化として醸成することに成功しているのです。一つの部署だけで完結してしまうと周囲への広がりがなく、研修効果も限定的になりますから、組織変革を目指すなら共有は必須でしょう。 

研修後も状況を共有し、ビッグデータを活用してともに成長を目指したいと願っています 

――研修を受ける企業に何を期待されますか。  

研修の前後が重要だと考えています。企業あるいはDX推進室の期待値がどこにあるのか、研修前に明確にしておくことはプログラムを組むうえで必要ですが、ここに関しては「実はよくわからない」というケースが珍しくありません。キカガクの場合はヒアリングを通して一緒に言語化していきますので、心配は無用です。ただ少なくとも、受講生の皆さんの属性はあらかじめ知っておきたいですね。できれば事前アンケートを取り、現在の課題感や学びたいことなどを把握できると、研修内容を調整して効果の精度を上げることができます。 

研修後は満足度アンケートを取る企業が多く、それはマインドセットの有無を測るうえで有効ではあるのですが、研修直後は高い数字が出るものです。ですので、本来は半年後、1年後と追跡調査を続けていただきたいと考えています。長期的に調べるべき項目は、研修を経た人材の活用数と活用事例です。3カ月などある程度時間を置いてからのほうが、率直なフィードバックを取得することができます。 

――研修後も、長期にわたるお付き合いが望ましいのですね。 

我々は今年8年目を迎えた若い会社で、今まさにデータを集積している道半ばにあります。企業の皆様には、活用数と活用事例をぜひ共有させていただきたいとお願いしています。より多くのデータを集積することで、サービスの精度は確実に上がっていきます。当社のコンテンツは日々更新され、それとは別に専門の開発チームによる新規コンテンツも拡充しています。ビッグデータと顧客の皆様からのフィードバックは我々を成長させ、次にご提供するサービスのバージョンアップへとつながります。 

また、当社では定期的に、お付き合いのある企業のご担当者を招いて意見交換する機会を設けています。DX人材育成というテーマにおいては競合事業者同士であっても、手を携えて知見を共有し合い、国全体の利益のために惜しみなく事例を公開し合う横断的なコミュニティーが形成されているのです。今後も、より多くの企業にご参画いただいて裾野を広げ、日本のDXを推進していく一助になればと願っています。 

   

― イトーキ 植田コメント ―  

DXの推進方法や人材育成のアプローチについて、多くの企業が試行錯誤していると思います。イトーキでは、DXの目指す姿や推進ステージを設計しましたが、前例のない中で、どの施策が効果的なのか、具体的な施策設計に悩んでいました。その時、AIやデータサイエンスの研修サービスを提供しているキカガクさんに注目しました。 

2023年に、イトーキのDX人財育成(※イトーキでは人材を人財と呼んでいます)研修の一部をキカガクさんに委託しました。打ち合わせを通じて、企業の文化や状況に応じて内容を調整している様子を見てきました。全く同じ研修プログラムは存在しないというキカガク社の姿勢が、秋山様のインタビューを通じてより明確になり、また、これまでのイトーキDX推進の道筋との重なりを改めて感じました。 

 【事例:ビジネスアーキテクト研修】 株式会社イトーキ:デザイン思考×DX企画立案×生成AIでDXを活用するビジネスアーキテクト人財育成へ〜育成導入担当者編〜 

株式会社キカガク 

2017年1月設立。DX人材の育成を目指し、AIをはじめとする先端技術の研修・DX 推進事業を手掛けている。創業から7年間でオンライン/オフライン研修を延べ150,000人が受講、カスタマイズ研修を提供した法人は1,000社を数える。目標は、教育を起点とした社会の変革を起こすこと。Great Place To Work®Institute Japanが実施した「日本における『働きがいのある会社』ランキングベスト100」小規模部門(従業員25~99人)で、2023年版 21 位、2024年版24位を獲得。 

秋山貴史(あきやま・​​たかふみ) 

株式会社キカガク 研修事業部 兼 セールス&マーケティング事業部 統括部長 

神戸大学で空港やコンテナターミナルの発着最適化を研究。AI開発ベンチャー株式会社ClassⅢの立ち上げ、商品企画と販売部門の責任者を兼任。2022年から株式会社キカガクでセールス部門の責任者、コンサルティング事業の立ち上げを経て、現在は同社研修事業の責任者を務める。 

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