ITOKI

ITOKI Open-DX Lab

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【Special】イトーキが目指す「働く人中心」のDX推進とは

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2022年1月、イトーキは社内IT環境のDX推進に取り組むとともに、顧客企業に対するDXソリューションの提供・開発を担うDX推進本部を発足させた。本サイト「ITOKI Open DX Lab」も、その一環としてローンチするものだ。本稿では、創業以来の大転換期をリードすべくDX推進本部長に着任した大月剛が、イトーキが描くDXのビジョンと、サービス提供における強みはどこにあるのか、今後の展望について語ったインタビューをお届けする。

  • インタビューは、撮影時のみマスクを外して行われました。(2022年3月取材)

なぜイトーキはDXに取り組むのか

イトーキのミッションステートメントは、「明日の『働く』を、デザインする。」というものです。社会のあらゆる領域でDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進むなか、これからの「働く」環境や空間のデザインに、デジタルツールやデータ活用を組み込んでいくことは、もはや大前提と言えます。つまり、イトーキにおけるDXへの取り組みは、自社の使命を果たすこと、そのものなのです。

まずは、自社のDX推進を先行させる計画です。ITの世界では、自社で使い知見を蓄えたものを外に売る、という考え方があります。私は「ITOKI on ITOKI」をやりたいと考えています。その第一歩として、社内のデータ収集やデータ統合に取り組み始めています。集めたデータを分析し、課題抽出をし、業務を効率化し、必要なサービス・ソリューションをデザインする、という取り組みです。

DX推進に必須となるパートナーシップ

データを中心としたデータドリブンのIT環境を社内に実装する際に重要なのは、市場にある最新のデジタル技術を取り込み、活用していくことです。そのためには、パートナーシップが必要不可欠です。クラウドベンダー、ネットワークベンダー、インテグレータ、ハードウェアベンダーあるいは大学の研究室などとの連携も視野に入れています。パートナーから市場での成功事例・失敗事例を学び、イトーキは本業に必要な業務に集中することで、効率的かつ効果的にデータドリブンのサービス・ソリューションを開発・実装していきます。

パートナーシップという言葉には、ベンダー企業とユーザー企業の関係性を変えていきたい、という思いを含めています。もともと私はベンダー側にいましたから、お客様に向けて「もっとこういうデジタル活用ができるのではないか」というようなご提案を考え続けてきました。しかし、やはりDXを実現する主体はユーザー企業であるわけです。ですから、ユーザー企業であるイトーキからベンダーさんに発信して「一緒にやりませんか」と声をかけて回っています。ビジネスとITを融合させてビジネスを拡大するという意識があるユーザー企業が、もっともっと必要だと思います。イトーキをこのような先駆的な企業にしたい、という思いが、私がイトーキに入社した理由です。

DX推進の鍵となる「働く人中心」の思考

DXというと、何かが起こる「魔法の箱」のような印象を受ける方も多いようですが、残念ながら「魔法の箱」ではありません。DXを実現するのは「人」です。データやデジタル技術を活用して、何のために何をトランスフォーメーションするのかが重要です。

また、「DXで生産性は向上するのですね」というようなこともよく聞かれます。もう一歩進めて、定型業務の自動化や人的ミスの削減によって、削減した工数で何を実現するのか、何のために生産性を向上させるのかが重要だと考えています。コスト削減は重要な達成指標でしょう。ただ、作り出した時間を本来業務の強化に使い、データ・デジタル技術をより身近なものとしてさらに活用するためのチャレンジに使うこともまた、非常に重要だと考えています。つまり、働く人の無駄を省いて、新しくやりたいことに取り組むためのDXであるべきです。DXは目的ではなく、あくまでも手段なのです。

もうひとつ、「働く人」を中心にDXを考えるとき、「人」は物理的な存在です。たとえば、「リモートワークで何が一番大事だと思いますか?」と聞くと、皆さん口をそろえて、「椅子」と答えるわけです(笑)。なぜなら、仕事をしている間、身体と一番接点をもち、密着して使っているのは椅子なのです。「椅子」を起点とした「働く人」のデータを活用することで、「働く人」が健康的に、より快適に生産性の高い仕事をするために、どんなサービスが展開できるだろうか。そうした想像力も働かせていきたいですね。

データ処理の技術ではなく、データ活用のベネフィットを開発する

つまり、「働く人」を取り巻く環境や空間から、どのようなデータをどう捉えて、より健康的で生産性の高い働き方につなげることができるか。データ活用のベネフィットをデザインする、これが私たちがやりたいことです。ここでいうデータとは、家具の寸法かもしれないし、動線かもしれないし、室温かもしれない。イトーキがDXでビジネスを拡大するときのコアはここにあると考えています。

このように、データの取り方をより洗練させ、効果のあるものにしていくための取り組みは、すでにいろいろと進めています。「働く場所」は大きく変化しています。リモートワークは、今後も働き方の大きな柱になることは間違いないでしょう。そうなると、いわゆるオフィス空間から取得するデータだけでは不十分ということになります。在宅や、コワーキングスペース、あるいはワーケーションなど、あらゆるワークシーンに対応するデータ収集をいかに可能なものとするか、今まさに議論を進めています。

また、「働く場所」だけではなく、「学ぶ場所」も大きく変化し、「学び方」も同様です。教育関係やデバイス機器ベンダー等のパートナー様と、より具体的で実践的な議論と検証を進めています。

「働く人中心」のDXを実現するための情報共有と議論の場を提供

最後に付け加えておきたいことがあります。「働く人」にまつわるデータ収集・活用は、当然のことながら、従業員の「監視」を意図するものではありません。しかし、「人」にまつわるデータ収集に対して、慎重に思われる方も少なからずいらっしゃることでしょう。ですから、私たちは今こそ、データ収集の対象となる「人」、その方々にどのようなベネフィットをフィードバックするのか、あらゆる多様な立場の方々と一緒に議論していきたいと考えています。この議論は、ディベートではなく、最終目標は共通としながら、それぞれの目線の角度や距離から見える問題や課題を共有し、その解決に向けてそれぞれに行動する姿勢が重要だと思います。

社内でもよく、「北極星を決めましょう」と話しています。一度進むべき目標を決めたら、紆余曲折することや、手段の違いはあるかもしれないけれど、最終的には同じ場所に行くのだ、というところは外さずに進んでいく。いろいろなデータや技術を介して、私たちは、「明日の『働く』を、デザインする。」のビジョンを実現し、「働く人」「学ぶ人」のために貢献したいと考えています。

この「ITOKI Open DX Lab」は、多様な専門知識やフィールドを有する皆さんとの情報共有や議論の場として機能させていきたいと考えています。そして社会における様々なDXが、その対象となる「人」を中心とした意義あるものになるよう、パートナーの皆さまとともに、共創、共進のプロセスに寄与する研究・開発活動を進めてまいります。

大月 剛(おおつき・たけし)
株式会社イトーキ 常務執行役員DX推進本部長

1990年に同志社大学経済学部を卒業後、横河・ヒューレット・パッカード(現 日本ヒューレット・パッカード)に入社。2012年2月から同社執行役員を務めたのち、2017年5月に日本オラクルに入社、その後常務執行役員に就任。日本オラクルでは、クラウド・システム事業統括、システム事業統括を担当した。2020年11月からは、日本AMDにおいてジェネラルマネージャーとしてコマーシャル営業本部を牽引。2022年1月1日付で株式会社イトーキ常務執行役員DX推進本部長に就任。

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