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メタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」のプロダクトマネージャーが語る、VR(バーチャル・リアリティ)の現在地

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エンターテインメントからビジネス、学校教育まで幅広い活用が期待されているVR(バーチャル・リアリティ)。その技術は私たちに何をもたらし、未来をどのように変えていくのだろうか。VR技術を使った国内最大級のメタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」を運営するクラスター株式会社において、プラットフォーム事業本部プロダクトマネージャーを務める東峰裕之氏が、メタバースの現在と未来を前後編にわたって解説する。前編は同社のプラットフォーム上でどのようなことができるのか語ってもらった。

3D空間上で大規模イベントや国際会議を開催

――クラスターはどのようなサービスを提供している会社でしょうか。

スマートフォンやPCVRデバイスなどから3D空間にアクセスして遊べるメタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」を提供しています。ここでは、ユーザー自身が作った3D空間「ワールド」でチャットやゲームを楽しんだり、音楽ライブや発表会などのイベントを開催して何千人、何万人もの観客を集めたりすることができます。官民との協業も多く、2023年は近鉄不動産とタッグを組み、リアルとバーチャルの融合による「新たなまちづくり」の実現に向けた第一歩として「バーチャルあべのハルカス」をオープンしたり、舞台芸術創造や人財開発研修の事業を行うヒューマンデザインと協力し、メタバース上に本格的シアター「メタヶ谷スタジオ」をオープンしたりしました。また、G7参加国の知財庁(G7知財庁)の長官級らがメタバース上に一堂に会したG7知財庁長官級会談では、当社が会場やアバター制作を担当しました。

――東峰さんはどのような経緯で入社されたのですか。

もともと先端的なものが好きで、学生の頃からサークルでインターネットサービスを作る活動をしていました。新卒でグループウェアを提供するサイボウズに入社。5年ほどUIデザイナーを務めたのちにスタートアップに転職し、デザイナーを経てプロダクトマネージャーに就任しました。VRは、2012年頃から個人向けのVRデバイスの開発が始まり、15年頃には複数のメーカーから製品が販売されるようになりました。当社も15年にVRスタートアップとして設立しましたが、当時、僕自身も購入したVRデバイスを使いながら「今後はVRWebのように生活になくてはならない技術になるだろう」と考えていました。

18年に入社してからはまずデザイナーを務め、今はプロダクトマネージャーとして製品開発の意思決定をする役割を担っています。

コンテンツを楽しむだけでなく、自分で独自の3D空間を作ることができる

――プラットフォーム「cluster」の強みや独自の技術を教えてください。

cluster」にはPCやスマートフォンからアクセスできますが、VRのヘッドマウントディスプレイやコントローラーなどのデバイスを使うと、身体の動きを他のユーザーとオンラインで共有できます。音楽ライブではアーティストが目の前にいて歌っている様子が伝わってきますし、ファンが応援している熱気も体感できるので、動画とは全く違う表現力と没入感があります。当社はそうした身体性のあるコンテンツに、チャットやボイスチャットなどSNSの要素を付加した3D空間を提供しているのですが、こうした企業は全世界的に見ても多くはありません。一見、ゲーム空間のようですが、そこではゲーム会社によって作られたコンテンツを楽しむことがメインになります。しかし、我々が開発しているのはあくまでプラットフォームなので、そこにユーザーが独自の3D空間を作ることができて、他の人が作った空間も楽しめる。自由度の高いプラットフォームと身体性を持った3D空間、この掛け合わせこそが面白さであり、強みとなっています。

――YouTubeでは動画を見るだけでなく自分で動画をアップできるように、3D空間を楽しむだけでなく、自分で独自の空間を作ることができるのですね。空間作りには特別な技術が必要ですか。

 「Unity(ユニティ)」というゲームなどを作るツールと連携して作成した3D空間を「cluster」にアップロードすることができます。また、プログラミングなどの専門知識がなくても、「アイテム」と呼ばれる壁や床などのパーツを組み合わせて空間作りができる機能「ワールドクラフト」を22年にリリースしました。このアイテム自体をユーザーが自作して、プラットフォーム内で販売することもできます。

――サービス利用者にはどのような人が多いですか。

歌ったり楽器を演奏したりするミュージシャンや、芸人さんのようにバラエティ番組のような企画を作る人、ワールドで遊べるゲームを作るゲームクリエイターもいます。

またバーを作ってマスターとなり、人を集めておしゃべりを楽しむといった楽しみ方をしている人も増えています。アクセスするデバイスはさまざまで、日常的にはスマートフォンでログインして、空間やアイテムを作る時はPC、イベントの時はVRデバイスという人もいます。

――

前編ではクラスターのサービスについて語ってもらった。後編では、メタバースが私たちの生活や仕事にどのような影響をもたらすかについて伺う。

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