ITOKI

ITOKI Open-DX Lab

for your inspiration.

メタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」担当者が語る、VRのある暮らしや働き方とは?

overview

近年注目を集めているVRが、私たちの未来をどのように変えるのか。国内最大級のメタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」を運営するクラスター株式会社のプラットフォーム事業本部プロダクトマネージャーの東峰裕之氏が、前後編にわたって解説。後編ではメタバースによる暮らしや働き方への影響について伺った。

リアルな場所に縛られない暮らしが、人間関係の構築方法を変える

――前編ではメタバースプラットフォームで多様な活動が行われていることを紹介してもらいましたが、私たちの日常生活もメタバースの登場によって変わるでしょうか。

そうですね。例えば、「cluster」にバーを作って友だちを集めておしゃべりしているユーザーがいますが、おしゃべりだけなら他のSNSツールでもできる。なのに、なぜわざわざメタバース上で行うのかというと、やはり身体的な感覚を得られるという点が大きいと思います。「cluster」ではアバターを使用しますが、好きにカスタマイズできるので現実世界とは違う自分を創ることができます。ちなみに当社社長のアバターは鳥で、僕はロボットなので、性別だけでなく人間であるかどうかも超えて、自由に自分らしさを表現できるわけです。アバターの存在感は大きく、「cluster」で交流していると他のメディアに比べて〝一緒にいるという感覚が強い。こうした利点がもっと広まっていくと、人々が今、リアルとWebを自然と行き来しているように、リアルと3D空間を日常的に行き来できるようになるでしょう。そうすれば、今まで物理的な場所に縛られていたさまざまなことをメタバース上で行えるようになります。それが定着すれば、社会における移動コストを別のところにかけられるような時代が来るかもしれません。

――物理的な制約がない分、メタバース上でより自由に人々が集まることができるようになるわけですね。コロナ禍を経てリモートワークが進みましたが、働き方はメタバースによってもさらに変わると思いますか。

Zoomなどのビデオ会議を利用する機会は増えましたが、オンラインではリアルで話し合っているような熱量が、なかなか得られないこともありますよね。その点はメタバースによって変わると思います。例えば当社の開発チームの中には、自分たちで作った「cluster」内の空間に常時接続で仕事をしているチームもあり、リアルのオフィスに近い感覚で仕事をしています。ミーティングの時に「今日は●●さんがプレゼンをします」と言うと、その人のアバターが前に出てきて発表しますし、隣にいる同僚のアバターに気軽に話しかけることもできる。仕事においてフィジカルに影響される面は想像以上にあるので、ビデオ会議よりも温度感のある関係を築きやすいと思います。

また、僕は「cluster」で毎週ユーザー向けのトークイベントに登壇していますが、3400人もの視聴者の前で話すのはリアルと同じように緊張しますし、反応もダイレクトに伝わってきます。今は「株主総会をclusterで開催します」と言うと「そんなところでやるなんて」と批判する人もいるかもしれませんが、そのうち珍しくなくなるかもしれませんね。

もちろん仕事だけでなく離れて暮らす家族と一緒に過ごすなど、これまで人間関係を構築する上で必要だった場所に囚われなくて済む、というメタバースの利点はもっと活用されていくだろうと思います。

メタバース上で活躍するクリエイターのインパクトを大きくしたい

――「cluster」の今後の展開について教えてください。

メタバースの価値をより多くの人に知ってもらいたいと思っています。方法はいろいろありますが、まずは「cluster」で活躍しているクリエイターの価値をもっと上げていきたい。差し当たっての目標は、彼らのやりたいことを実現し、世の中へのインパクトを大きくしていくこと。そして、今はユーザー任せになっている「もっとクリエイティブを磨きたい」と思ってもらうための体験作りを我々からもサポートしていくことで、イベントの質を高めてユーザーを増やしていきたい。また、投げ銭やアイテム販売などの機能はすでにありますが、それをさらに進化させ、YouTubeにおけるYouTuberのように、「cluster」での活動で生まれた利益によって生活できるクリエイターが登場する流れを作っていきたいと考えています。

- イトーキ 小笠原コメント -

お話しを伺い、メタバースを使ったリモートワークの進化は、オフィスの概念を変える可能性を秘めていると改めて感じました。従来の物理的なオフィス空間から、バーチャルなオフィス環境への移行は、働き方の多様化を促進し、新たなオフィス家具やレイアウトの需要を生み出すように思います。私たちのメンバーも、メタバースを用いた会議を実践し、お話しにあったような身体性がコミュニケーションにあたえる良い影響を実感していますが、こうしたメタバースの利点はまた、オフィスにとどまらず、教育現場へも活用できると考え、以下のような実証実験にも取り組んでいます。

(参考:メタバース技術を活用した中高学校の授業DX:探求/協働学習の実践 )。

クラスター株式会社

誰もがバーチャル上で音楽ライブ、カンファレンスなどのイベントに参加したり、友達と常設ワールドやゲームで遊ぶことのできるメタバースプラットフォームを展開している。スマホやPCVRといった好きなデバイスから10万人が同時に接続することができ、これにより大規模イベントの開催や人気IPコンテンツの常設化を可能にしている。メタバースを実現し、全く新しいエンタメと熱狂体験を提供し続けている。

東峰裕之
プロダクトマネージャー

2008年のはてなインターンに参加したのち、サイボウズ株式会社や現Qiita株式会社にて toB/toC プロダクトのUIデザインやプロダクトマネジメントを担当。
2018年12月からはメタバースプラットフォーム 『cluster』を運営するクラスター株式会社にて、プロダクトマネジメントを担当。デザイン、PM、コミュニティをキーワードに、三浦半島の三崎港で妻と暮らしている。

TOP