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今井さん、イノベーションを生む働き方ってどんなものですか?

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情報通信や自動車電装分野の製品で世界トップクラスのシェアを誇る「フジクラ」。創業130年超の老舗企業の中で、新規事業を推進し、スタートアップ企業との協業を進める、シリコンバレーオフィス所長の今井さんにお話を伺いました。

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日本に足りないのはイノベーションを生む「活力」

今井さんはフジクラで、日本とシリコンバレーのオフィスを行き来していると伺いました。

はい、私はいまフジクラシリコンバレーオフィスの所長として、スタートアップ企業との連携を進めています。現地オフィスは当社がオープンイノベーション推進のために開設したものです。

私は、2014年からフジクラの長期戦略を作っていたのですが、当初は何から手をつけていいか分からず......。ヒントを得るため、国内外のスタートアップ起業家にたくさんお会いしていた時期があったんです。そういう方々から刺激を受け、フジクラも変化をチャンスと捉えるような会社に変えてゆきたいと考え、2017年に発表した「2030年ビジョン」ではオープンイノベーションの推進を重要施策の一つに掲げました。

日本とシリコンバレーを行き来して、働き方の違いを感じることはありますか?

大いにあります。かつて、アメリカの優良大手企業の社員が「僕はデキが悪いからこの会社に入った」と話しているのを聞いて驚いたことがあるのですが、アメリカでは多くの人が起業したいという夢を持っている。また大企業も「イノベーション創出」を明確に目標の一つに掲げるので、「維持」より「変える」ことが優先されることが多い。その結果、一人ひとりの働き方も大きく違う、という印象です。

ダイバーシティが進んでいたり、議論が活発だったりするのも、優先順位の差でしょうか。

そうですね。そして何より、イノベーションに対する活力が違う。例えばシリコンバレーには、20代の起業家たちが「イノベーションを起こそう」「社会の課題を解決しよう」と集まってきます。正直、以前は彼らに対して「資本もないのに何ができるんだ?」と思っていましたが、接するうちに大きな夢、ビジョンを持っている起業家の方々を尊敬し、共感を抱くようになり、「この活力こそがイノベーション創出の源なんだ!」と思いを改めるようになりました。

日本の大手企業で長く働いていると、そのように価値観を転換するのは難しかったのでは?

もともと、社内でも「イノベーション」を提唱する立場にはあったんです。でもどちらかというと、製品の品質を良くするなど、既存の価値を向上させる「持続的イノベーション」でした。AppleやGoogleがやったような、また多くのスタートアップ企業が取り組んでいるような全く新しいものを生み出す「破壊的イノベーション」は他人事でした。それは「誰かが起こすもの」であって、我々は波に乗る方だ、と。

なるほど、イノベーションのあり方の違いですね。

でもスタートアップ企業はみな「我々が社会を変えるんだ」「自分たちの商品が新しい価値を生み出すのだ」と言う。彼らの話を聞いていると、変化のタイミングを捉えることができたら、誰にでも破壊的イノベーションを起こすチャンスがあると思えたんです。

長い歴史があるからこそできるイノベーションを

この7月にオープンされた「BRIDGE Fujikura Innovation Hub」ですが、どんな目的がありますか?

一般的に「イノベーションは既存の知と既存の知の組み合わせから生まれる」と言われています。「BRIDGE」は外部の知と我々の知、あるいは外部の知と外部の知をかけあわせてイノベーションを起こす場です。外部とのコミュニケーションを促すため、イベントなども行う予定です。海外の方々との出会いも生むべく、テレビ会議システムを利用したグローバルなイベントも仕掛けるつもりです。

外部の知と接する場があれば、日本人の働き方も変わるでしょうか。

そうですね。手軽な一歩としては、クラウドサービスなど新しいサービスを使ってみる、という方法もオススメです。私はスタートアップ企業と仕事をするなかで、クラウドサービスを使うことが増えました。「資料を送ります」とDropboxのリンクが送られたり、「データを見ておいて」とGoogle スプレッドシートのリンクが貼られてきたり。電話会議のときはZoomを使います。どれも便利なんですよ。

このようなクラウドサービスを使うと、テレワークも推進できるし、意思決定も早くなる。日本で新サービスを導入するときはセキュリティなどの検証から入りますが、まずは新しいサービスを使いながら、働き方を変えていくのがいいかもしれません

なるほど。様々な新しいものからの発見体験ですね。

イノベーションが知と知の組み合わせで生まれるとすれば、ダイバーシティはイノベーションの必須条件になります。

また早稲田大学大学院の入山章栄先生は、「個人が多様な経験を持つことも重要」とおっしゃっています。「イントラパーソナルダイバーシティ」といって、一人が複数の場所や組織で働いたり、多数の組織が一人の知を活用したりすることです。組織も個人も、いろんな知見を組み合わせることで、力を高めていく時代になると思います。

日本では「未知への挑戦」より、「確実な成功」を目指す価値観が根強くあるように感じます。

そうですね。必ず成功するイノベーションというのはありません。スティーブ・ジョブズも多くの失敗をした上でたまたまいくつか成功して、最もイノベーティブな経営者になりました。アメリカでは起業して失敗しても、その経験を武器にまた会社に雇ってもらえる。そんな風土は、まだ日本の組織にはないですね。

日本の組織の価値観を変えないといけないですね。

ええ。ただ、これまでの歴史を全否定する必要もないと思います。例えば、シリコンバレーで「弊社には133年の歴史があります」と言うと「Wow!」と驚かれます。さらに「僕はその会社で30年間働いていいます」と言うと、また「Wow!」と驚かれる。日本とアメリカの人の流動性は大きく異なり、すぐに変えられるものではありません。日本の企業の長い歴史はイノベーションの足枷になることもありますが、私たちはそれを強みに変えて、「133年の歴史があるスタートアップ」になりたい。日本企業ならではの変わり方があるはずで、それをいま模索している最中です。

今井さんにとって「働く」とは?

どんなに小さなことでも社会の課題解決につながっているという意識を持っていたい。例えば、レンガを積むという仕事も、ただ積んでいるのではなく「街をつくっている」と捉える気持ちで仕事をしたいですね。


撮影協力: BRIDGE Fujikura Innovation Hub
http://www.bridge.fujikura.jp/
「予想もしない出会いが、予想もしない未来をつくる」
どんな未来も、出会い次第です。フジクラと一緒に"みらい"社会の課題を解決したい方はぜひ足をお運びください。

今井 隆之(いまい たかゆき)
株式会社フジクラ 新規事業推進センター シリコンバレーオフィス 所長

1988年入社。10年間の研究所勤務を経て電子部品の事業部門で約15年間、開発、製造、技術営業に携わり、タイ、アメリカへの赴任を経験。2015年7月、つなぐみらい戦略室長に就任し、「2030年ビジョン」策定を牽引する。2017年4月から現職。シリコンバレーを拠点にグローバルな情報収集を通じて、新規事業創出を加速する。

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